(”new cigar” @Tokyo Japan/ Yohei Maeda Photography)
10年程前、東京でお笑い芸人を目指して奮闘していた2人の写真を撮った。
彼らの名前は”New Cigar”(≒ 新しいたばこ)。
たばこのように中毒性があり、かつ、好きな人だけが好きで嫌いな人にはまったく必要ない。それでいて、健康に良いわけでもない。百害あって一利無し。そんな存在。そして、今までにない新しい存在。そんな意味だったと記憶している。とても分かりやすく、かつ、思いのこもった良い名前だったからよく覚えている。
ずっと話を続けるボケ担当と、そのボケの一番のファンかの如く笑い続けるツッコミ担当。その二人の関係性を良く表現できた良い一枚だったと思う。(自画自賛)
Youtubeラジオというラジオのすゝめ
最近ラジオをよく聴く。とはいえ、いわゆる生のオールナイトニッポンを夜な夜なラジオの前で待ってラジオを聴く。といった、いわゆる本物のラジオ体験ではない。Youtubeラジオにハマっているのだ。
自分のラジオ体験はPodcastが最初だった。アメリカにいたころ、Podcastに収録されていた色んなラジオ番組を聴く事が楽しみだった。音楽を聞くように、ラジオを聞き流しながら作業をしていた。
それが最近はもっぱらYoutubeに変化した。Youtubeにせっせとラジオ番組をアップしてくれる方々がいるから自然とこちらに移行してきた。
もう一つの大きな変化といえば、ラジオ発信者のバラエティの豊かさかもしれない。昔は芸能人、お笑い芸人、文化人という有名人が発信者であるラジオだけだったが、最近はいわゆる素人の人たちの番組が面白い。視聴者数だけをやっきになって稼ごうとするYoutuberでもない。淡々と、だが、確実に、技術的にも内容的にも思考錯誤しながら変化している様がみてとれて応援したくなる。
中でもオススメは”マメカン”。
岐阜出身の二人MC。享年夫は音楽・漫画・絵etc.. とにかく何でも自分の手で創作する。ラジオ内の音楽・動画・編集・企画etc..をすべて手作りしている。マサキは3代続く実家の縫製工場を手伝いながら、”made in GIFU JAPAN”を掲げたPaimyというファッションブランドを立ち上げている。
そんな彼らが約3年程前から更新し続けているYoutubeラジオがとにかく面白いのだ。
Youtubeラジオ”マメカン”を見たくなる5つの理由
1.オープニングのクリエイティブ(動画と音楽)
2016年の11月時点でSeason13まで収録されている。1Season毎に13回のラジオで構成されているので、延べ160本強のラジオが収録されている事になる。
基本はシーズンごとにオープニング動画は替わる。が、この動画のクオリティが異常に高い。荒削りな部分はあるが、動画、音楽のバラエティの広さと、毎回検討もつかない方向から飛んでくる発想は、オープニングをみているだけでも面白い。
各30秒足らずなので、13個の異なるオープニングだけでもぜひ観てみほしい。異様に興味をそそられるはずだ。
個人的に好きなオープニング達
2.学生時代の下校途中感
第133回『久しぶりの雑談 ハゲてきた話』
「おれの好きなマサキじゃねえな。くいとめようよ。」
「俺テンパ(天然パーマ)は禿げんと思っとったでなー。」
「いや、ハゲるやろ。」
ハゲ談話。ひたすらMCの1人マサキのハゲに関する話。聞いたところで一つも人生の足しにならないこと必至。それでも享年夫が馬鹿にしたくてたまらない様子と、マサキが本気で嫌がっている様子。逆にマサキがいつも以上に生き生きしていて良い。
冷静に考えてほしい。こんなやりとりを世の中に垂れ流して何の意味があるのだろうか?いや、意味なんてない。それでもこれに何処か懐かしさを覚える理由は、そこらじゅうで溢れる学生時代の他愛もない学校帰りの帰り道、道草してでも帰らないで話す公園や、道端。そう、そこにカメラが設置されているような会話だからだと思う。
Youtubeラジオ”マメカン”はジムで走りながら聴く事が多い。ニヤけながら走る気持ち悪い自分を隠しながら聞いた事を鮮明に覚えている。
3.ネタ(映画ネタと時事ネタ)とアホさのバランス
時事ネタ
先日のアメリカ大統領選挙についても彼らは岐阜からタイムリーに発信する。
「俺犬を飼っててさ、犬が自分を人間だと思っとるんやて、で、母親が(母親の)犬を連れてくると、人間が違う犬を見てるような目で犬が犬を見とるんやて。これってトランプの現象と同じ。メディアが社会は良くなってる様な事いって自分の生活も向上した気になっとるけど、ふと自分の周りをみてみるとそうじゃない事実に気づくわけ。犬といっしょやて。」
彼らなりの時事ネタの表現が軽快に耳に入ってくる。
映画ネタ
実際、マメカンのこの回をきっかけに映画”海よりもまだ深く”を観に行こうと思った。彼らは映画を観ることが好きで、公開中の映画に関する話をする回も多い。映画好きも、映画好きでなくても気軽に聞ける内容でオススメだ。
以前書いたブログ元ネタはマメカンのこの回なのだ。
アホさ
「俺バツ2なんやてね。」
「うそん!一番恋愛のアドバイス求めとったやつがバツ2なんて!」
典型的な田舎の結婚/離婚を10代20代で経験しているマサキ。包み隠したくもなるような内容もうまれたばかりの赤ちゃんばりにそのまま世の中に打ち放つ。
「お前は離婚クリエイターやでな。」
という容赦無い一言。
「離婚するんやったら、一回やらせてくれ。」
とマジで懇願した駐車場での当時の思い出話。
離婚した元妻が更にまた離婚したのを機に、久しぶりに飯を食べに行ったというディープな話を話したかと思えば、おすすめAV女優について語る話をAVソムリエと称して同じ回に入れ込むアホさよ。70歳過ぎのAV女優デビュー作について笑いあう二人。”ヤマダマサキ”の名前とAV女優達との恋愛相性度チェックをする回よ。最高じゃないか。
4.編集力
数回聴くと気づく。程よい間で話が意図的に編集してある事に気づく。キーワード毎に説明と音が小気味よく挿入されることに気づく。40分程の時間、単調に話が続くわけでもなく、程よい間隔で話が変化する。人を飽きさせない工夫というか、見る人を意識した編集への努力という名の優しさが垣間見れる。
5.撮り続ける姿勢
これは勝手な”期待”に近しい。
今しか語れないことがあり、その時しか視えないことはあると思う。”等身大さ”というと陳腐だけれど、やはりリアルに年齢を重ねながらその年齢での考え、感情を残していくことほど面白いものはないと思う。お金が絡んでくる正規の番組だと、どうしても大人の事情で数年、数十年単位で継続することは難しい。まだ序章に過ぎないと思うが、この数年の回をみていくだけでも彼らの変化が見てとれる点は興味深い。
そういう意味において、30歳前後の多感な時期に加えて、これから始まる40代、50代、60代、70代・・・と、引き続き撮り続けて欲しいと願って止まない。
何処からでも世界はみえる
”偉大なる勘違い”
マメカンの中の人がよく口にする言葉。誰しも最初は何人でもないから勘違い、根拠のない自信が何かを始める大切な燃料になる。
個人が発信できる環境が整いつつある昨今。自分の努力次第で何処からでも世界はみえる。創ること、発信すること、続けること。
彼らなりの”たばこ”になる日もそう遠くないと思う。
お願い:Youtubeでの番組登録を。
気になった方はYoutube上でマメカンを登録してみてほしい。 ふと暇になった際に、ふと更新されたなと気づいた際に、聴いてみる。そんな肩肘はらない存在で良いと思う。
Maeda