(”3 to 1” @Uyuni Bolivia / Yohei Maeda Photography)
21歳の夏休み。グレイハウンドバス(高速バス)の一ヶ月乗り放題チケットを購入して、アメリカ一周の旅をした。 (*今はもうこの乗り放題チケットはないらしい。)
写真の知識も経験も特別なかったが、とにかく写真を撮りたい。自分の作品を創りたい。という一心だけでアメリカを旅した。
東海岸のNYから出発し、反時計回りに都市という都市を気の向くままに移動した。時にはほぼ1日近くバスに揺られたこともあった。真夜中に治安の悪そうなバス停に泊まった事もあったし、乗り換えをミスした事もあった。寝過ごした事も。
シカゴで出会った写真家。Elliott Erwitt。
その旅の途中、偶然目にしたのがElliott Erwitt(エリオット・アーウィット)だった。シカゴのとある本屋さん。まだ写真集なんて興味もなかった。何故かふっと目に入ってきた表紙。一瞬で彼のセンスが分かった。というか、僭越ながら同じ匂いを感じた。
衝撃的だった。表紙の写真だけで分かった彼の感性。数枚ページをめくって見るのを止めた。
あまりに完成度の高い濃密なスナップ集。自分が撮りたいと思っていた意図的な写真。そのクオリティの高さ。完成していると思った。白黒フィルムで、マニュアルカメラで撮影していた自分とまったく同じフィールド(条件)で、最高な写真達。やられた。。と、感動よりも何故か悔しかった。
Elliott Erwitt Snaps
(恥ずかしながら、当時は過去の写真家や、いわゆる歴史を全く知らなかった。彼がどれ程著名な方かというのは後日知っていく事になる。)
スナップ写真という崇高さ
自論だが、本当に素晴らしい写真はなかなか創れない。
視えない人には視えないし、そもそも、出逢おうと思っても出逢えない。唯一、それを視える審美眼のある者が、撮りたいと願い、カメラを持って、その時その瞬間に、そこに存在している事しか成し得ない。つまり、そんな非効率だけど良質なスナップ。ましてやその傑作選ほど、写真家としての集大成はないと思っている。
だから未だにスナップにこだわっている。一連のテーマに沿った作品群ではなく、ただただ素晴らしい一枚のスナップ写真を撮る事にこだわっている。
エリオット・アーウィットによろしく
あなたは、1928年生まれの88歳(2017年1月時点)。 年齢的にいって、確率的には恐らくは私の方が、あなたよりは未来を見るだろう。「あなた亡きこの世界は私が撮るから。」と、勝手に心に決めて写真を撮り続けてます。
あなたが集めたスナップの集大成に負けない、あなたが撮り得ない未来の景色を、人生を通して切り撮ります。
※少々値は張るが、1人の才能ある男が人生を通して集めた感性の集大成が見れると思えば買うに値する。ミニマル(モノを所有しない)が流行りの昨今だか、モノとして所有するならばこういった魂入ったモノを持つべきだ。私も28歳の誕生日に貰って以来、今も大事に所有している。