(”crucifixion” @Tokyo Japan / Yohei Maeda Photography)
実家の母から、「知人の大工さんが、お父さんが亡くなって、沢山古いカメラがあるから見に来たら?って言ってたよー。」 というメールをもらった。
何のことかと思ったが、話を聞くと大変興味深かったので土日を使って実家に戻りがてらその家へ訪れてみたのだった。
87歳の元大工。写真が大好きなおじいちゃん宅の遺品整理。
今年亡くなったというそのおじいちゃんのお宅へ訪問した。母の知人(その方の息子)は大工。今回訪れた方も生涯大工として生きてきた方だった。
田舎の住宅街にある一軒家には、誰も住んでいない。息子さんと待ち合わせて家へ入れてもらった。
亡くなってからバタバタしており、遺品整理を始めたばかりだという家には、大量のゴミ袋と手付かずの写真部屋があった。二階に上がると、そこはカメラと機材、撮影済みフィルム山達で溢れた部屋だった。
性格が分かるくらい、大変几帳面に整頓されたカメラ達。一つずつ丁寧にラベリングされた機材達。基本すべてフィルムカメラ。時代を感じるものの、フィルムを好む自分にとっては宝の山。。丁寧に扱われていた様が容易に想像できるくらいきれいに使い込まれたカメラやレンズ。
実際、息子いわく、大工の仕事もとにかく細かく、一緒に働くのは嫌なくらいネチネチ言われたとのこと。人柄がカメラ機材の管理や並べ方からうかがえる。
もう少し若い頃はここが暗室だったらしい。晩年こそ体力がなくなり物置化してはいたものの、よくここで写真を焼いていたらしい。「親父に写真が浮かび上がってくる様子を見せられた。」と、息子さんは語っていた。自宅の暗室。私が夢見る景色の一つ。共感しかない。
収納用にサイズをあわせた手作りの木箱。流石の大工仕事が随所にみられた。
たくさんのカメラバック達。息子さんは「まったく、同じようなものばっかり買ってて何が違うのかね〜?」とぼやいていたが、写真をしている人なら分かる。カメラバックには不思議な魅力があるのだ。「いやいやそれは違いますよ。」と、心の中で反論していた自分がいた。
額にはいった写真作品達。
未現像の撮影済みフィルムや撮影前の残ったフィルムや、現像用薬品。
暗室時代に使っていたであろう引き伸ばし機も2台ほど見つけた。
一階の大量のゴミ袋からたくさんのネガを発見。きれいに撮影されたネガ達。
写真の趣味は違えど、なんだか勿体ないないなと思ったので、こちらを戴いてきた。
一度も直接お会いしたことない。容姿も声も名前も知らない。
それでも写真が大好きだったことは遺品という名の宝物達からひしひしと感じる。どんな写真を撮っていたのだろうか?ふと、自宅でこの頂いたネガをスキャンして、実際に見てみたいと思ったのだ。丁寧に撮影されたネガが勿体なく感じたのだ。写真で会話をしてみたい。そんな感覚だろうか。
大量の手作りの梅酒、かりん酒、らっきょう、にんにく達。丁寧に一つずつラベリングされている。「まったくこんなにつくってねー。。 」と息子さん。
ものづくりがすきだったんだろうな。と想像する。
フィルムの数。
レンズやカメラに記された表記。
綺麗なカメラとレンズ。
カメラバックの数。
暗室の後。
色褪せないフィルムネガ。
額にはいった作品。
本音をいえば、生きてらっしゃる間にここで話を聞いて見たかった。どんなきっかけで写真を始めたのか? 何を撮りたいと思っていたのか? 写真について、カメラについて、暗室の作り方についてetc..
願わくば、生前に一度写真談義をさせて頂きたかったなぁ。間違いなく盛り上がっただろうと思う。残ったネガの一端でその一部をしてみようかと思う。
Maeda